式年遷住居=数十年ごとに建て替える農家の母屋
私が勝手に式年遷住と名付けたのは東京周辺の住居に多くある、農家や商家の建て替え形式である。
これは私の祖父の育った福島のとある集落の建築群のスケッチ。大半が100年以上まえの建築だが、その半分近くが左右非対称の2つの建物が連結した形式である。
例えば上のスケッチ上から3段目の右の住宅は実際見ても、外装から3,40年前に建てられた建築に見える。しかし中に入るとそこには20畳以上の大広間と太い柱のある、築100年を超える住宅だった。これは私の先祖が建てたものだが、二階建ての左半分はもともと、水回りと蚕を育てた土間だったが半分解体してキッチンや風呂を作り二階建てとした。
↑集落の式年遷住建築群
↑20畳の大広間スケッチ
二階建ての利点は家族構成の変化に対応する容量を増やすだけではなく、古くからある母屋の荷重に耐えられるように支える、バットレスのような役割ももっている。荷重を減らすため茅葺をやめ華やかな赤いトタンの家が集落で流行したそうである。
近年、古くからの母屋は東日本大震災の影響で傾いてきているが1寸ほど離れて建てられた二階建ての建物がこれを支えている。
時期によって様々な形状の更新がされている。雪国らしいマンサードの屋根勾配を持った二階建、素の形状にあわせたもの、まるごと一軒建て替えたように見えるものなど。
↑元々寄棟の一階建ての母屋だった右側は二階建てに更新されてはじめている。このように3,40年前と現代の建物が共存する家々が増えている。
これらの式年遷住は集落内で大工などの様々な職人が連携して回すことができていた。